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2020.04.16お知らせ

【新入生の皆さまへ】学長よりメッセージ

 天使大学にご入学の学生、大学院生の皆様、こんにちは。ご存じの通り、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、その影響は私たちのすぐ身近なところにまで及んでいます。皆さんの入学式もできず、また、授業の開始も大幅に遅れることを余儀なくされています。これはすべて皆さんと皆さんの周囲の人たちの健康と安全のためのやむを得ない対応です。

いまこうしている間にも、世界の各地では、感染した人々のために日夜を問わず、場合によっては自らの命の危険さえ抱えながら働いている医師、看護師の皆さん、そのほかの医療従事者の皆さんやたくさんのボランテアがいます。これらの人々こそは、暗闇の中にあって希望の証です。

 見通しのきかない大災難のただなかにあって、皆さんもさぞかし不安なことと思います。しかし、他者との社会的距離をとるように要請されているなかでも、他の人々、世界の人々との心のつながりを少しでも深め強めることはできないでしょうか。

 このたびの感染症の恐ろしさは、自分の知らないうちに、こちらの病が想像を絶する規模で、周りに人々に影響を与えるということです。まさにこのグローバルなありようは、逆に、私たちの小さな行いが世界の人々との連帯や思いやりの広がりとしてよい影響を及ぼすことができるということをも教えています。もはや、自分だけさえよければよい、とか、自分だけがひどい目に遭っているということはあり得ないのです。自分の小さな良さは、ほかの人のためになるし、自分の小さな過ちは、同時に人を苦しめることになるのだということです。

 神も仏もないような理不尽、不条理なことが人類の歴史には少なくなかったのですが、その中にあっても、他者の苦しみ、人間の苦しみを少なくするために、精一杯の誠実を尽くして努力を傾ける人々がいました。そうした人々のおかげで、私たちはいま生きることが許されているのです。

 

いま皆さんが入学した天使大学の歴史については、いずれゆっくり学びたいと思いますが、設立母体である、カトリック教会の修道女会、マリアの宣教者フランシスコ修道会が、第二次世界大戦で、荒廃した札幌と東京に、看護の専門学校を設立したことが、この大学の直接の由来です。今、私が述べた、この「荒廃した札幌と東京」というところに今一度注目しましょう。

 このたびのコロナ問題もそうですが、私たちの世界の歴史、日本の歴史、そして私たちの人生には必ずや何かしらの「荒廃」「困難」「逆境」というものがあります。その中にあっても、あきらめず、立ち上がり、希望の灯をともして立ち直ることができるのです。それはなにか特別に英雄的なことではないかもしれません。心の荒み、倦怠、寂しさ、落ち込み、失意、ストレス、などいった誘惑の中でも、私たちにいまできる小さな希望の行為はないでしょうか。外的な行動が制約されても、たとえば、音楽を味わうとか、ふだんは読めない文学作品を手に取るとか、離れている友人に手紙を書く、といったことです。ある人はこの機会にこそ、内面的な人になって、隠れた存在への祈りに招かれるかもしれません。

 

 天使大学の建学の精神は、「愛をとおして真理へ」(per caritatem ad veritatem)です。「真理」とは難しい感じがしますが、キリスト教では真理は「神」の別名でもあります。しかし、それを人間の側からやさしく言い換えれば、私たちは「本当の自分、本物の自分を探し求めている旅人」だということではないかと思います。それははるかな道ですが、手掛かりは、いま、この旅の始まり、道の途中にあるということ、それが「愛をとおして」ということではないでしょうか。

だれか身近な一人の人を大切にすること、食べ物を与え、病気の人をケアし、瀕死の人を慰める、そういう、皆さんがこれから学ぶ学びの中心に、愛の具体的な実践があります。「荒廃」するこの世界の中でも、それは必ずできること、一番求められていることです。

 一日も早く、この感染症が収束を迎え、この学びの機会が開かれて、皆さんが世の中に役立つ人となることができるようにと祈りつつ、教職員一同、皆さんとの出会いを心から待ち望んでいます。

 

2020年4月16日

天使大学学長

田畑 邦治