ケアって、どういう意味だろう?

2005.6月 血圧と健康について考えてみましょう

健康の話題が耳に入った時「血圧」という言葉を聞くことがありますね。高血圧。低血圧。血圧は高くても低くても私たちの体調に影響します。今月は血圧についてお話ししたいと思います。

■ 血圧は血管を流れる血液の圧

私たちの体には常に血液が循環していますが、それは心臓がポンプとなって常に血液に圧をかけて押し出しているからです。血液の循環は生命を維持するために必要不可欠で、血液はポンプの役割を担う心臓によって押し出され、広がった血管が収縮する時にさらに押し出されることを繰り返しながら動脈から細動脈、毛細血管へ流れます。そして毛細血管から全身の組織へ酸素や栄養分を運び、組織から老廃物を受け取りながら静脈に流れこみ再び心臓へと戻っていきます。

血圧は心臓から押し出された血液が血管内を流れる時にかかる圧を指し、「心拍出量」「末梢血管抵抗」というものが関与しています。

心拍出量とは心臓が体に送り込む(拍出する)血液の量です。たとえば心臓のポンプ機能が低下して血液を拍出する力が弱まったり、心臓に戻ってくる血液の量が減って一回に拍出する量が減ると血圧は低下します。

末梢血管抵抗は細動脈の血管で作りだされます。細動脈の筋繊維の収縮によって血液の通り道(血管の内腔)が狭くなると、血液が流れにくくなり抵抗が生まれます。これを末梢血管抵抗といいます。この筋繊維の収縮は主に自律神経という神経やホルモンによってコントロールされ、抵抗が強まると血圧は上昇します。

また、血圧は血管の壁の状況によっても影響を受けます。弾力性に富む血管は圧がかかった時風船のように膨らむため抵抗を減らしますが、弾力性が低下した血管は膨らめないので抵抗が強くなります。例えばコレステロールという物質がかかわる動脈硬化では、動脈硬化は動脈の弾力性の低下で血管壁が硬くなり、コレステロールによって内腔も狭くなってしまうので恒常的な血圧上昇がおきてきます。「血圧」はこのように複雑な仕組みでできあがっています。

■ 血圧の変動と健康

時々「私の血圧は134(mmHg)」などと断言している方がいますが、実際はある程度の幅で血圧は常に変動しています。運動時や興奮したりするだけでなく、姿勢を変えるだけでも血圧は変化します。直立した姿勢は重力の影響をより強く受けるので、重力に逆らって下半身の血液を心臓に戻さなければなりません。そのため椅子から立ち上がった時などは急激に血液の心臓への戻りが悪くなるので心拍出量が減り血圧が下降します。しかし、ほとんどの場合自律神経などによる末梢血管抵抗の調節の仕組みによって、血圧はすぐに調整されるので、普段は血圧の変動を自覚せずに生活ができているわけです。

しかし、人によっては、立ち上がったり長時間立ち続けていると、めまいがしたりや気分が悪くなったり、時には失神することもあります。一般に「立ちくらみ」と呼ばれる症状の原因は多様ですが、健康な人でも自律神経による末梢血管抵抗の調節がうまく働かず症状があらわれる場合があります。症状が強くあらわれて生活に支障がでる場合は「起立性調節障害」として治療の対象にもなります。

自律神経の機能の崩れは成長の著しい思春期に多いので、中学生の時に立ちくらみを経験した方も多いかもしれませんね。しかし、思春期を過ぎても不規則な生活や睡眠不足によってバランスが崩れることがあります。血液の循環に必要な血圧を保つことは、私たちが日中に楽しく友人と過ごしたり、勉強やクラブ活動に熱中できることにつながります。自律神経の機能を保つには、規則正しい生活が一番です。毎日朝食をとり、睡眠を十分とるだけでも、目覚めた時から生き生き活動できるように体が整えられていきます。自律神経系に関するケアは2005年度の天使のケア2月号(睡眠の質を高めるには)も是非参考にしてみてください。

■ 血圧測定という看護技術

最後に血圧測定について少しだけお話ししましょう。通常血圧というと動脈の圧を指し、正確な血圧値はセンサーを直接血管の中に入れて流れる血液の圧を測る方法しかありません。しかし、そのような大変な方法をとらずに、動脈圧と同じ目安になるものが血圧計で測定する血圧です。

ホースに水を流した状態でホースの途中を折ると水がどんどんたまってホースが硬く膨らんだという経験はありませんか?これはたまった水の圧がホースにかかってホースを膨らませているのですが、血液も同じで心臓から押し出される時に血管の壁に圧をかけています。つまり、血圧計による血圧測定では、血液が流れる時に血管壁にかかる圧を測定することによって、間接的に血圧値を測っているのです。もちろん血管内で直接測った値とは厳密には違いますが、直接測定した値と同じように身体内部の状態を知る重要なデータとなります。

看護師として血圧測定をする場合、血圧計を正しく取り扱って正確な値を測定する技術を身につけるだけでなく、測定値が示す意味を判断する力も必要です。看護学科では1年次の基礎看護技術論で血圧測定法を具体的に学習し、形態・機能学で今まで述べたような血圧のメカニズムなどを学習します。また、2年次以降の臨地実習では、入院中の方へのケアの一部として血圧を測定して身体状況を査定する実地での学習を行いながら技術を身につけていきます。

参考文献

  1. Lippold-O, Cogdell-B,入來正躬,永井正則訳:生理学-はじめて学ぶ人のために-,総合医学社,1999.
  2. 佐藤昭夫,佐伯由香編:人体の構造と機能,医歯薬出版,2002.
  3. 本多和雄:現代の起立性低血圧 改定新版,1997.
  4. 山村雄一,吉利和 監修:高血圧症,低血圧症,中山書店,1991.

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