ケアって、どういう意味だろう?

2007.4月 歯の健康

“8020運動”を知っていますか。80歳で20本の歯を残すという運動です。自分の歯が20本以上あると、ほとんどの食べ物をよく噛むことができ、おいしく食べることができます。現在、80歳で歯が20本以上ある人は、わずか15%、1人平均の歯数は8.21本です。12歳以降でむし歯が急増し、このころから歯肉炎も増え、15~24歳の6割もの人が歯肉炎にかかっています。いつまでも自分の歯でおいしく食べるために、今回は、歯の健康と大切な歯を守る方法について考えてみたいと思います。

1.歯の健康と全身の健康

むし歯があると食べ物を十分噛み砕くことができずに栄養が不足したり、むし歯が気になって集中力を失ってしまうこともあります。また、十分な咀嚼ができずに片側だけで噛み続けるとあごの発達に影響して、顔がゆがんでしまうこともあります。乳歯がむし歯になり永久歯との交替がうまくいかないと歯列(しれつ)不正(ふせい)や不正咬合(ふせいこうごう)の原因となります。むし歯や歯周病が悪化すると血液中に細菌が混じり、心臓や腎臓の病気を発生する原因になることもあります。

高齢者の調査では、自分の歯が20本以上ある高齢者のほとんどが日常生活も自立しているのに対して、噛むことに困っている人の約半数が介助の必要な状態でした。生涯にわたり健やかで楽しい生活を送るためには、歯の健康は大切です。

2.歯を失う要因

日本人の約6割が、何らかの理由で歯(永久歯)を失っていますが、その9割は、むし歯と歯周病が原因です。

むし歯の初期は痛みがありませんが、進行して歯髄にまで達すると痛みを感じるようになり、歯髄の治療が必要になり、それができなければ抜歯しなければなりません。歯髄は、神経だけでなく多数の血管や免疫細胞を含む歯の生命と健康を維持する大切な組織です。歯髄を抜く(一般にはシンケイを抜く)と歯はもろく抜けやすくなりますので、痛みを感じない初期の治療が大切です。

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(図の説明)

  1. エナメル質:人体の中で最も硬い。神経が通っていない(むし歯になっても痛くない)
  2. 象牙質:ここまでむし歯が進行すると痛い。
  3. 歯髄:いわゆる「神経」
  4. 歯肉:「歯ぐき」薄いピンク色。歯槽骨をカバー。
  5. 歯根膜:クッションの役割。
  6. 歯槽骨:歯を支える骨。

思春期は、ホルモンが大きく変化する時期です。このホルモンの変化に反応して、「歯肉」が炎症を起こし、歯肉炎にかかりやすくなります。歯肉炎が進行すると歯のクッションの役割をしている「歯根膜」、歯の土台である「歯槽骨」にまで炎症が広がり、歯槽骨が溶ける歯周炎(歯槽膿漏)にまで進行すると歯を支えることができなくなり、最後には歯が抜けてしまいます。日本人の7割以上が歯肉に何らかの所見をもち、40歳以降に歯を失う大半が歯周病によるものです。歯肉炎や初期の段階で、日常のケアをきちんと行えば治ります。

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(図の説明)

1 正常
  • 歯肉は薄くピンク色
  • 骨は上まである
2 歯周炎(初期)
  • 歯肉が赤くなり、歯みがきで時々出血する
  • 歯垢
3 歯周炎(中等度)
  • 歯肉がはがれる
  • 赤く腫れる
  • 骨が後退する
  • 歯垢
  • 歯石
4 歯周炎(重症)
  • 大小の歯石
  • 歯垢
  • 血や膿が出る
  • 赤紫色に腫れる
  • 骨に出っ張りができ、後退する
5 歯周炎(末期)
  • 歯石が蔓延する
  • 歯垢
  • 常に膿が出る
  • 紫色に腫れる
  • 骨が支える力を失う
  • 歯が動揺(ぐらぐら)する

3.むし歯や歯周炎の原因

歯の表面や歯と歯の間を楊枝の先でこすってみてください。白くてネバネバしたものがくっついてきませんか。これがプラーク(歯垢)で、食べ物のカスではなく、細菌の塊です。むし歯や歯周病の原因となる菌は、このプラークの中で口から入ってきた食べ物を栄養にして繁殖して、そのうち酸をつくり出し、歯の表面を溶かします。これが「むし歯」です。また、プラークの中の細菌が出す毒素によって歯ぐきに炎症を起こすのが「歯周病」です。歯をみがかずにいると、2~3日後には、歯についたプラークによって歯肉に炎症が起こり、1週間後には歯肉炎になり、2週間後にはプラークは歯石になってしまいます。プラークは、歯の大敵です。

4.歯の健康を守る方法

1)歯みがき(ブラッシング)

むし歯や歯周病の最大の予防法は、正しい歯みがきです。むし歯の予防は、歯の表面や溝をみがくことが基本ですが、歯周病予防のためには、歯と歯ぐきの境目に歯ブラシを当て、歯肉をマッサージするように、しっかりみがくことがポイントです。

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  1. 歯ブラシが歯と歯ぐきの境目にくるように90度に当てる。押し当てる力は200~300グラム程度。(計量ばかりを押してみて、その感覚をつかみましょう。)
  2. 歯ブラシを小刻みに左右に動かす。10回ごとに歯ブラシを当て直しながら、歯1本~1本半ごとにずらしていく。
  3. 奥歯の内側(舌のある側)をみがくときは、歯ブラシを45度ぐらいに当てる。
  4. 前歯の裏側は、歯ブラシを立てて、縦に小刻みに振動させる。下の前歯の裏側も同様。
  5. かみ合わせ面はやや強めにかき出すようにみがく。
  6. 歯ブラシは強く押しつけない。歯みがき剤を使う場合は少量にとどめる。

歯ブラシは、口のサイズや歯ぐきの状態に合わせて選びます。一般的には、植毛部は短めでブラシは硬すぎない方が良いです。歯ブラシは、握り込まないで鉛筆をもつように(ペングリップ)軽く持ち、一本一本みがきます。硬い歯ブラシでゴシゴシ強くみがくと歯の根本がすり減ってしまうこともあります。また、歯のすき間に食べ物がはさまりやすかったり、みがき残しがある場合は、「歯間ブラシ」や「デンタルフロス」を使いましょう。

プラークの増殖には24時間かかるといわれています。毎食後の歯みがきが理想ですが、プラークコントロールのためには、1日1~2回は、10~15分の確実な歯みがきを心がけましょう。

2)歯みがき剤や洗口剤の利用

歯みがき剤や洗口剤は、必ず使わないといけないものではありません。しかし、使用することによって、プラークの除去効果やフッ素やキシリトールによるむし歯予防作用、歯周病の原因となる細菌の増殖を抑制し、炎症をおさえる作用、口臭を防ぐ、歯を白くするなどの作用があります。洗口剤は、液体が口腔内のすみずみまでいきわたらせることができるので、就寝前などに歯みがき剤による歯みがきと併用することでプラーク除去効果がさらに高くなります。多種多様な製品の特徴を把握して目的にあったものを選ぶと良いでしょう。

3)歯の定期健診(プロフェッショナルケア)

治療などの必要がなくても、少なくとも1年に1~2回はかかりつけの歯科を受診するように習慣づけましょう。むし歯や歯周病がないか、みがき残しはないか、口の中をチェックしてもらいます。また、自分に合った歯みがき方法の指導を受けることができ、歯みがきでは落とせない歯石や着色汚れを落としてもらうこともできます。

家庭でのセルフケアと、プロによる定期的なケアを上手に組み合わせて、いつまでも健康な歯を守りましょう。

歯の健康を守るためには、この他にも食事や噛むこと、免疫力の低下を防ぐための睡眠や規則正しい生活、禁煙なども大切です。次回は、食事と噛むことについて考えます。

天使大学看護栄養学部看護学科では、基礎看護技術論で口腔ケアについて学び、病院や在宅看護の実習で実践します。また、地域看護の実習でも乳幼児や高齢者の歯の健康に関する健康教育を行っています。

引用・参考文献

  1. 松田裕子 口腔ケア 健康ガイド ―歯からはじめる健康学― 学建書院 2000
  2. 朝倉勉他 よい治療をうけるために知っておきたい「最新歯科医療」現代書林2004
  3. 厚生統計協会 国民衛生の動向  第53巻第9号 通巻第832号 2006
  4. 浦出雅裕監修 かんたん口腔ケア メディカ出版 2002

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