2007.1月 眼の健康と食生活
栄養状態が悪くなると、肝臓や筋肉・脂肪組織に蓄えられていたブドウ糖や脂肪酸などの栄養素が使われて体重が減少していきます。しかし、眼は脳と同様に非常に重要な臓器ですから、栄養状態がかなり悪くなっても最後まで保護されます。このような仕組みにもかかわらず、極度に栄養状態が悪くなった場合には、眼にも症状が表れます。今回は、食生活が眼の健康にどのような影響を及ぼすのかを見ていきたいと思います。
眼の健康にかかわる栄養素
ビタミンA
ビタミンAが不足すると、明暗を感じる細胞の機能が落ち、暗い場所では光を感じなくなります。軽度の不足はビタミンAの補給で網膜の感度は元に戻りますが、重度のビタミンAの不足が長く続くと視細胞自体の崩壊が始まります。死んでしまった視細胞は再生することはできないので、最終的には完全に見えなくなってしまいます。このように暗い場所で視力が低下する症状を夜盲症といいます。ビタミンAが不足すると夜盲症の他に、角膜乾燥症、角膜軟化症、結膜乾燥症などの症状が表れます。
ビタミンAは、レバー、緑黄色野菜(Aの前駆体カロテノイドとして)などに多く含まれています。
鉄
鉄分の不足は、貧血の原因のひとつです。この鉄欠乏性貧血によって、視力の低下が起こることがあります。これは、網膜の血液循環が悪くなり、十分な栄養素が行き渡らないために発症します。食欲不振で低体重の24歳の女性で、右眼の視力が0.02にまで低下した例が報告されています1)。この女性は血液検査で血液中の鉄分が低い値を示しており、長163cm、体重35kgと非常にやせていました。この症例では、鉄剤の内服によって視力は1.0に改善しています。
鉄は、レバー、あさりやしじみなどの貝類、卵黄、きなこや豆腐などの大豆製品、ほうれん草や小松菜などの色の濃い葉菜類に多く含まれています。
ビタミンB群
ビタミンB群は炭水化物の代謝や細胞の老化防止に関係するビタミンです。眼の健康に関わることでは、視神経や眼を動かす筋肉の疲労の回復、眼の細胞の新陳代謝の促進に効果を発揮してくれます。過敏性大腸炎のために朝食、昼食を欠食し、夕食も飲酒が中心で、喫煙習慣もある47歳の男性の視力が低下し、両眼とも0.2まで低下しましたがビタミンB群の点滴などの治療により、視力は両眼とも1.2まで改善したという報告例があります2)。
ビタミンB群の種類と多く含まれている食品には、次のようなものがあります。
- ビタミンB1・・・豚肉、レバー、玄米、胚芽精米、豆類、種実類
- ビタミンB2・・・豚肉、レバー、卵、牛乳、納豆、種実類
- ナイアシン・・・肉類、魚類
- ビタミンB6・・・卵黄、玄米、胚芽精米
- パントテン酸・・・肉類、魚介類、卵
- ビオチン・・・レバー、魚類
- 葉酸・・・ほうれん草、枝豆、レバー、のり
- ビタミンB12・・・魚介類、レバー
ルテイン・ゼアキサンチン
黄斑は、眼の奥の網膜の中心部にあり、視力をつかさどる組織です。黄斑部分にはルテインとゼアキサンチンという黄色の色素が存在して、有害な光線、特に青色の光を吸収して黄斑部を保護しています。加齢性黄斑変性症は、老化によって黄斑部が変化するために起こる疾患です。加齢性黄斑変性症は、アメリカでは失明の原因の1位であり、日本でも増加傾向にあります。ルテインの摂取が加齢性黄斑変性症のリスクを減少させることが、様々な研究の結果から示唆されています。ルテインは、ほうれん草、ブロッコリー、かぼちゃなどの緑黄色野菜やとうもろこし、卵黄などに多く含まれています。
今回紹介した「ルテイン」と「ゼアキサンチン」は、聞きなれない栄養素だったのではないでしょうか?ルテインとゼアキサンチンはカロテノイドのひとつです。カロテノイドは植物中で作られる黄色や赤色の脂溶性の色素で600種類以上あります。野菜では、トマトや人参、かぼちゃ、ほうれん草、ピーマン、ブロッコリーなど緑黄色野菜に多く含まれています。また、果物では、柿やあんず、プルーン、パパイア、オレンジなどに多く含まれています。
1日の野菜の目標摂取量は、350g以上です。そのうち、緑黄色野菜は120g以上摂取することが目標となっています。しかし、平成16年の国民健康・栄養調査の結果では、野菜の摂取量が最も多い60歳代でも摂取量は平均で約300g程度であり、20~40歳代では約240gしか摂取されていませんでした。また、緑黄色野菜は、摂取量の最も低い20歳代では、約75gしか摂取されていません。カロテノイドの目標摂取量は示されていませんが、加齢性黄斑変性症を予防するためにも、とくに若い世代では積極的に野菜を摂る必要があると考えられます。がんを防ぐ効果があるといわれているβ‐カロテンもこのカロテノイドのひとつです。野菜を積極的に摂るよう心がけて、眼と体を健康に保ちましょう。
今回は、野菜をたくさん摂ることができるレシピを紹介します。冷蔵庫に残っている野菜などでも試してみてください。
温野菜サラダ

材料(1人分)
- にんじん・・・2cm
- かぼちゃ・・・40g
- ブロッコリー・・・1/4個
- 水・・・1カップ(200cc)
- バター・・・小さじ1/2
- 塩・・・少々

作り方
- にんじんは厚さ5mm程度の半月切りにする。
- かぼちゃは厚さ1cm程度に切る。
- ブロッコリーは小房に切る。茎は皮をむき、適当な大きさに切る。
- 土鍋に水、塩、バター、にんじん、かぼちゃ、ブロッコリーの茎を入れて蓋をし、火にかける。
- 沸騰したらブロッコリーの房を入れて蓋をし、再び沸騰したら火を止める。
- 15分程度そのままおいておくと余熱で野菜が柔らかくなる。
- 網杓子などで皿にすくい取り、好みのドレッシングやマヨネーズなどをそえる。
*土鍋が無い場合は、にんじんがある程度軟らかくなるまでゆでてからブロッコリーの房を入れ、ブロッコリーが軟らかくなるまでゆでてください。
簡単トマトスープ

材料(1人分)
- ミニトマト・・・3個
- 卵・・・1/2個
- 温野菜サラダの残りのゆで汁・・・150cc
- 塩・こしょう・しょうゆ・・・・適量

作り方
- 温野菜で残ったゆで汁にトマトを加えて煮る。
- 塩、こしょう、しょうゆで調味する。
- 溶き卵を加え、ひと煮立ちさせる。
*温野菜サラダの残りのゆで汁が無い場合は、水150ccにコンソメ1/2個を加えてください。
引用文献
- 1.藤田今日子、奥英弘、菅澤淳、池田恒彦:栄養欠乏性視神経症の1例、神経眼科、 21:41-46,2004
- 2.冨田真知子、賀島誠、吉田慎一、四宮加容、塩田洋:鉄欠乏製貧血の若年女性に発症した網膜中心静脈閉塞と網膜中心動脈分枝閉塞の合併症例、臨床眼科、 60:1219-1222,2006
参考文献
- 水野有武:眼に効く栄養学、米田出版、2006
- 中嶋洋子、蒲原聖可:食べて治す!最新栄養成分事典、主婦の友社、2003
- 加藤鋭治:ユニバーサルクッキングのすすめ、中央法規、2006
- 田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊夫、山田和彦 監訳:健康食品のすべて、同文書院、 2006

