2006.6月 対人関係について考える~対人関係に悩んでいませんか?
対人関係とは何でしょう?
対人関係とは、「人と人の心理的な結びつき」を意味します。人の成長において、他者とどのような対人関係をつくるかということは、その人の人格形成に影響を与えるだけでなく、人間としての成長発達に深く関わることになります。皆さんのような高校生の時期は、特にこの対人関係について多く悩む時期といわれます。対人関係に苦手意識を持たず、悩みながらも人と関係を結べるために、今月は対人関係について
- 年齢に応じた対人関係の特徴
- 対人認知という他人を理解する方法
- 対人距離という人付き合いの適切な距離
- 自己開示という他人への自分の伝え方
という、4つの視点で一緒に考えてみたいと思います。

年齢に応じた対人関係の特徴:幼児の対人関係と中学生の対人関係での特徴の違いを知っていますか?
対人関係の発生は、乳児と母親の関係の確立が出発点です。成長とともに子どもは遊びを通じて他児と交流するようになり交友関係が芽生えます。幼児期以降では、この交友関係のウエイトが次第に高くなりさらに成長するにつれ、より複雑で高度なものとなります。
例えば子供の時の近所の砂場で偶然であった友達関係から、中学生になると勉強や友人関係の悩みを打ち明けあう内面的で本質的なものに変化します。また、友達との比較から自分の性格や自分らしさなどに関心が高まり、これが他者との関係の持ち方に影響を及ぼし始め、交友関係にも特徴が表れます。高校生の皆さんでは、同じ空手教室に通う共通性からお互いに親密さを感じられる空手仲間という関係や、同級生や同年齢といった広い意味での共通理由から形成される異性を含む社交的関係、あるいは一緒に励ましあい受験勉強したなどの体験からつくられた親友関係など、交友関係にも特徴が現れます。更に部活での先輩・後輩関係や先生と生徒の関係など、上下の役割行動を身に着けていく契機となる関係も結べるようになります。
このように対人関係は、その年齢、発達とともに対人関係の範囲、関係作りの目的が変化し、関係性そのものが多様化します。もしあなたが今、対人関係つくりに悩みを感じていたら、もしかしたら未体験の関係作りに挑戦しているせいかもしれません。普通の友達付き合いはできるけれど親友関係は結べないとか、同世代とは付き合えるが年齢が異なる人とは関係ができない、などです。関係作りは新しい価値観や習慣との出会いの場でもあります。最初から上手にできると思わずに焦らず多くの出会いを通して、自分なりの関係づくりができるように自分を育てていきましょう。
対人認知という他人を理解する方法:普段、貴方は何から人を判断していますか?
人は生涯にわたり、数え切れない多くの人と出会いと別れを繰り返します。その際、他者に対して自分なりにその人がどのような人か判断をします。人に関して様々な情報を手がかりに他人の性格特性や心理過程を推論する働きを専門用語では「対人認知」といいます。
この「対人認知」という働きには個人差があります。ある人物について同じ情報が与えられても、そこから推論される人物理解、印象は人によって様ざま異なります。同じ人物であっても、誰もがその人に関した共通の情報を区別なく取り込むわけではなく、時と場合に応じて、相手を“理解する”のに自分が有用と思われる情報を選択的に受け取り、その情報に基づき人物理解を推論します。これは判断する人の過去の経験の違いや性格特性の違いなどに由来します。例えば先生の評判です。貴方にとってはとても親しみのある先生であっても、友達にとっては苦手な怖い先生に認知されることありませんか。
更に対人認知はそのときの状況によっても影響を受け、変化すると考えられています。例えば貴方が夏休みの講習会に初めて参加したとします。参加者には一人も知り合いはいませんし、その講習会場も初めて訪ねました。おまけに貴方は遅刻ギリギリに着いて、すでに教室の席は満席に近い状態です。急に焦りと心細さで不安になってきました。そんな状況のときに、何も貴方が言わない前に自分の方から席をあけてくれた方に出会ったら、貴方はなんて良い人だろうと初めてあったこの人を思いませんか。平常時に受ける他人からの情報と自分自身が不安定なときに受ける他人からの情報では、そのときの対人認知には差が生じます。

同じように対人認知に影響を与えるものに、「対人感情」があります。みなさんも経験がありませんか?同じことを言われるのでも、自分が尊敬している人から言われるのと、嫌いだと思っている人からいわれるのでは、受ける印象が全く違うということを。相手に対して好意的な感情を抱いているか、もしくは嫌悪感を抱いているかというのは、対人関係の持ち方に伴いながら、相手についての見方に強い影響を与えます。

もし貴方が今、だれかとの対人関係に漠然と悩んでいるとしたら、以上のように貴方は相手のことをどのような情報からどのような対人認知をしているか、またその際どのような対人感情を抱いているのか考えてみましょう。また反対に相手の方は貴方についてどのような情報をもっていて、どのような対人認知をしていると考えられるのか客観的に整理してみましょう。それは漠然とした悩みをひもとく手がかりになるかもしれません。
対人距離という人付き合いの適切な距離:対人関係の丁度良い距離を知っていますか?
私たちは普段、他者との関係に応じて適当な距離をとって相互作用を行っていますが、対人関係における距離を「対人距離」、もしくは「パーソナルスペース」といいます。
家族や親しい友人の場合にはその距離がとても近くなりますが、先生や初対面の人などには一定の距離を置いています。このような対人距離には4つの段階があるといわれています。距離の近いものから順に、「密接距離」(相手の存在が明確に捉えられ、密度の高い接触が可能な0~45CM)、「個体距離」(相手を視覚的に捉えることができ、比較的容易に接触できる45~120cm)、「社会距離」(努力せずに相手に接触できない、仕事上のコミュニケーションに伴う距離、120~360cm)、「公衆距離」(相手とのしきいは低い、講義、演説など360~750cm以上)があります。(この距離の置き方は絶対的水準ではありません。)
対人距離のとり方は相手との関係性や親密度に応じて変化します。つまり適切な対人距離は、どのように相手のことを自分が対人認知しているか、相手は自分のことをどのように対人認知しているか、という相互作用の中でその適切さが計られます。万が一それほど親しくない他人が、あなたが安心できる距離よりも貴方に接近したら、無意識のうちに身をひいて一定の距離を保とうとするし、不快感も伴うでしょう。ですから対人関係において適切な対人距離が取れることは、安定した対人関係を形成するのにとても重要といえます。さてあなたは家族と会話する時、一体どの距離で話しますか?友達と話すとき、どの距離で話しますか?周囲の人を思い出しあなたとの対人距離を考えてみてください。
自己開示という他人への自分の伝え方:貴方はどのくらい自分のこと伝えていますか?
自分自身に関することを特定の人に対して話すことを「自己開示」といいます。自己開示は相手への信頼感を表すことから、対人関係づくりに影響を与えると言われています。自己開示の身近な例は、自己紹介です。初対面の場での自己紹介は見知らぬ相手にどのように受け止められるかが気になり緊張しますが、一方で自己紹介が十分にできると、一段と親しく関係作りができることもあります。このように自己開示はとても対人関係に重要な鍵を握っています。
自己紹介の他にも自己開示の身近な例は、悩み事の打ち明け話、相談があります。学校
生活での悩み、皆さんもお友達や先生に相談していますよね。それも自己開示のひとつです。心の中の困ったことをありのままに他者に語ることによって、気持が軽くなったり、悩んでいたことが整理されたり、判断できずに迷っていたことが決められたり、そのような体験ありませんか?また逆にあなたがだれかから相談を受けた場合、その人の自己開示に対して貴方に対する信頼感や、親密さや好意を感じたことはありませんか?本当はこんな風に考える人だったと理解を深めたことはありませんか?
対人関係の悩みが増えると言われる高校時代は、実はこの自己開示の練習の時期といえ
ます。多くの人との出会いを通して自己開示する、あるいは自己開示を受けると言う繰り返しが豊かな対人関係つくりへの一歩につながります。無理することなく自己開示できるようになるには練習が必要です。失敗を恐れず、焦らず、ゆっくり練習してみてください。
医療現場ではこの対人関係を作る能力がとても求められます。病にあって苦しみの中にある患者様に対して、医療者はできるだけ早く安心していただける関係を提供する必要があります。天使大学看護栄養学部看護学科では、自己開示を手がかりにした対人関係つくりを健康生活看護学Ⅴ(精神看護学)で学習します。
引用・参考文献
- 対人行動学研究会編 対人行動の心理学 誠信書房 1986

