2006.4月 新しい環境に適応することと、ストレスとの関係
新生活でストレスを大きくせず適応する手がかり
ご入学、進級おめでとうございます。新学期が始まりましたが新しい環境には慣れましたか?皆さんは、今、その新しい環境をどんな風に感じていますか。
そこで今月は、「新しい環境に適応することと」と「ストレス」がどのように関係しているかに焦点をあてながら、新生活でストレスを大きくせずに適応していけるための手がかりをお伝えします。
(「ストレス」については、天使のケア2006年2月号でも詳しく取り上げているので、参考にしてください。)
■ 新しい環境とは?
さて本題に入るまえに、みなさんは「自分の新しい環境について説明してください」と尋ねられたらどのようにこたえますか。
環境とはその言葉どおり、「取り囲んでいる周りの世界」を意味し「人間や生物の周囲にあって、その意識や行動に何らかの作用を及ぼすもの。またはその外界の状態」といわれます。
ですから皆さんの新生活における環境とは、「新しい教室の広さ、明るさ、騒音の有無、室温、湿度、匂いや1クラスの人数、学校までの行程や通学手段など」といった物理的環境だけではなく、「担任やクラスメートと貴方との関係、親しい友人の数、苦手な人の有無、クラスでの貴方の役割、部活動や課外活動の有無、クラス全体の雰囲気、学校全体でのクラスや部活動での役割や、これから始まる貴方の1年間のスケジュールの忙しさ」など、貴方を取り巻くあらゆる外界の環境の全てが新しい環境であるといえます。
■ 新しい環境に適応することとは?
「新しい環境に適応する」ということは、みなさんがこの新しい環境から様ざまな情報を入手する、もしくは皆さん自身がこの環境に働きかけるなど、「皆さんと環境との相互作用を繰り返すプロセス」で実現します。
この「皆さんと環境との相互作用を繰り返すプロセス」とは、別な言い方で説明すると、「新しい環境で生じたストレッサーに対する皆さんのコーピング(対処)行動の過程」といえます。下の図を見てみて下さい。これはストレス発生からコーピングまでの過程をあらわしたものです。
皆さんは過去の体験で培われた自分の考えや生活習慣を携えて「1.新しい環境に入ります」。そこで人間関係や学業などなんらかの出来事に遭遇し「2.ストレッサーが生じます」。ストレスと感じるのは身体的理由からかもしれないし、精神的理由かもしれません。いずれにしても皆さんはこのストレスとなる出来事について、自分の考えや周囲からのサポートを活用して「3.評価」を行います。いったい何がおきているのか、遭遇した出来事はどのようなことなのか、また自分にとってなぜこの出来事がストレッサーと感じるのか、自分の考えや経験または周囲からの助言を活用して分析します。そして、3の結果にもとづいて「4.有効な対処方法の実践」を試みます。この1~4のプロセスを、人間は絶えず繰り返し環境に適応しようとします。このような「人間と環境とのたえまない相互作用」が環境に適応する過程といえます。
ではここで例を挙げて考えてみましょう。例えば皆さんが高校に入学し、新1年生だったとします。高校入学が「1.の新しい環境に入る」にあたります。親友は他の高校に進学し、同じ中学から進学した友人は自分のクラスにはいません。初めて知り合いが全くいない中での新しい環境です。この「知り合いが全くいない中での新しい環境」が「2.ストレッサーが生じている」状況です。また、「このクラスにはこれまでの知り合いが誰もいなく心細いけれど、隣の席の人は家が近く共通の趣味があり友達になれたし、自分と同じく看護師を目指している人が多いので、これから共通の目標に向かって頑張れそうだ。」と皆さんが考えると「3.遭遇した出来事の評価」をしていることになります。更に新しい友人をつくるために友達と過ごす時間を増やし、心配なことがあっても深刻に悩まずに時間の経過をみて、クラスに馴染でいこうとする行動は、皆さんなりの4.対処行動(コーピング)といえます。
いかがですか。きっとこれまで無意識にでも皆さんがやってきたことではないでしょうか。新しい環境ではどうしても初めて体験することが多いので、この初めてということがストレッサーに感じやすくストレスになりやすくなります。しかし天使のケア2月号でもご説明したようにストレッサーに感じることや、ストレスがあること事態は悪いことではありません。
■ ストレス反応が心身の健康に与える影響
ところでみなさんは、「ストレス反応」と言う言葉を知っていますか。先ほど説明したストレッサーは、ストレスを生じさせるなんらかの出来事や刺激でしたが、ストレッサーによって生じる心身の変化(ゆがみ・健康への影響)を「ストレス反応」と呼びます。下の図をみてください。1~4までは全く同じプロセスです。つまり4の対処行動がうまくできるとストレス反応を回避できるのですが、4がうまく働かないと5の「ストレス反応」を生じやすくなります。
ストレス反応の現れ方は個人差が大きく、同じ環境でも考え方の特徴や周囲からのサポート、対処行動も様ざまなので、万人同じストレス反応が現れるとは限りません。災害や事故現場で同じ場所にいた人達全員が同じストレス反応にならないのは、この理由からです。
ストレス反応は心身に生じる変化ですが、具体的には不安、イライラ、ドキドキ、恐怖、悲しみ、集中力や意欲の低下といったものや、疲労、不眠、血圧上昇、肩こりなど筋緊張、頭痛、発汗などのものがあります。先ほどの例にたとえると、3出来事の評価の時点で、「先ほどの知り合いがいなくても、前向きに新しく出会った友人に自分から関心を寄せていけそうだ」と評価するのではなく、知り合いが全くいないことにより、自分の新生活は「孤独で辛いものになる」と評価し、更に対処行動として「あまりクラスメートに関わらないようにする、一人で過ごす」などの行動であれば、ストレスを解消することにつながるような有効な対処行動にはならないかもしれません。その結果、「朝、学校に行こうとするとお腹が痛くなる」、もしくは「教室にいると頭痛がして気分がイライラする」などのストレス反応が生じるかもしれません。
ストレス反応は、心理的反応、行動的反応、身体的反応に分類することができます。このストレス反応は、ストレッサーがなくなれば短期間で消失します。しかし、ストレス状況がある程度長期化すると様々な身体の病や不適応状態などに発展することがあります。できるだけ早く自分のストレスに気がつき、ストレスを大きくしない、溜め込まない手立てが大切となります。
■ 新生活でストレスを大きくせず適応する手がかり
さてこれまでいろいろと新環境に適応することとストレスの関係を説明してきましたが、いかがですか。せっかくの新しい環境に入ったわけですから、できれば誰もが早く体調を崩すことなく楽しく適応したいと思われるでしょう。そこで最後に気軽にできるストレス対処の手がかりを紹介します。
ストレスを重くする言葉から軽くする言葉へはじめにストレスと強く感じることを増やさない、強めない考え・言葉の紹介です。あなたは今、「絶対に○○○だ。いつも○○○でなくちゃ。私(僕)には無理だ、どうにもできない。」という考えや言葉で頭がいっぱいになっていませんか。これはまさしくストレスを強める考えや言葉です。そこで「もしかしたら、思い込みかもしれない。たまには○○○じゃなくてもいいじゃない。大丈夫、きっとどうにかなるはずだ」という考えに切り替えてみます。これはストレスを楽に軽くする言葉や考えです。今、頭の中をしめている不安なこと、心配なこと、どれかひとつでもよいので、自分のそれまでの言葉からこの楽なことばに置き換えて言葉にだしてみてください。はじめは全くそのように思えないことも、自分の意識や考え方の傾向に気がつき、少しずつ修正するということはとても有効といわれています。
ストレス対処の方法いろいろ次に普段の生活でできるストレス対処の方法の紹介です。良いストレス対処方法は、どれかひとつというのではなく、状況に応じて以下の内容を選んで、時には組み合わせて活用できると早く対処できると言われています。特に「いいこと探し」は、どのストレスに対しても行えるとよいですね。

以上、「新しい環境に適応することと、ストレスの関係」についてでした。新らしい環境での不安を心のバネに変えてこの新学期が皆さんにとって、新しい自分との出会いの機会にもなれるよう応援しています。
天使大学看護栄養学部看護学科では、2年次からこのような心身の健康について健康生活看護学V(精神看護学)で学習します。
引用・参考文献
- 坂野雄二監修:「ストレス・マネジメント実践マニュアル」、北大路書、2004
- 島田洋徳:「児童の心理的ストレスとコーピング過程・知覚されたソーシャルサポートとストレス反応の関連」ヒューマンサイエンスリサーチ、2、27-44、1993
- 竹中昇二:「子供のためのストレス・マネジメント教育」北大路書房 1997

