2005.11月 カルシウムと骨粗鬆症―食事に気をつけて丈夫な骨に
「骨の健康」について考えてみませんか?
私たちは体調管理のため、またダイエットのためなど、日常的に体重を量っていますね。体重は日々の健康状態を判断する指標のひとつになります。それでは、みなさんは自分の「骨」の健康状態をどのように判断するのでしょうか?
体重のように簡単に重さを量ることはできません。「骨」は私たちの体の中にあって目に見えませんが、体を支えるためにとても大切な役割を担っています。骨の量は「骨密度」によって表しますが、測定には特別な機器が必要で、正確な値を知るには医療機関で測定してもらわなければわかりません。密度が高いほど(骨塩量が高い)丈夫な骨と考えられます(骨塩量については天使のケア10月号参照)。
■ 骨量が急激に増える時期があります
思春期前半に骨塩量の蓄積速度が最大になるという研究報告があります。図は年齢ごとの骨塩量を表したものです。男子では12~14歳(水色で示した部分)、女子では11~13歳の間(黄色で示した部分)に骨塩量の急激な増加が見られます。つまり、蓄積速度が最も速いことを示しています。これは生涯に蓄積される最大骨量の約1/4に相当するともいわれます。高齢期の骨粗鬆症を予防するためにも,この時期に骨量を高めておくことはとても重要です。無理なダイエットによる栄養不足や、体重の減少は、遠い将来の骨粗鬆症と関係があることを忘れてはいけません(ダイエットに関しては天使のケア9月号を参照)。
■ 骨とカルシウムの深い関係
人体は約206本の骨によって支えられています。骨は歩行時には体重の1.1~1.2倍、ランニング時で3~4倍の負荷がかかるので、それらの負荷に耐えられるように骨はとても硬くなります。同じ重量の鋼鉄よりも丈夫といわれています。しかし、その強いはずの骨ですが、骨の老化による「骨粗鬆症」になると、くしゃみをしただけで肋骨が折れてしまうことがあります。なぜ簡単に骨が折れるほど、骨がもろくなっていくのでしょうか?
その理由は生体内のしくみにあります。骨は人体のカルシウムの99%を貯蔵し、残りわずか1%のカルシウムは、血液中(細胞外)と細胞内に存在しています。カルシウムは、神経の伝達機能の促進、ホルモンの分泌、血液の凝固などの働きがあり、人の生命活動にかかわる重要な成分です。
心臓や筋肉の収縮も、筋細胞の外と中で、ほんの少しのカルシウムをやり取りすることによって起こります。体には血液中のカルシウム濃度が常に一定に保たれるシステムがあるので、濃度のバランスが崩れたとしたら、筋肉は伸びたまま、縮んだまま動かなくなってしまいます。そのため、血液中のカルシウムが過剰な場合は尿中に排泄され、不足した時は、すぐに骨のカルシウムが血液に補給されます。身体は骨の持つ大切な機能を犠牲にしてまで、血液へのカルシウム補給に努めようとするのです。血液中に出て行くカルシウム量が多くなる理由として、食事中のカルシウムの不足、女性の場合では閉経後のホルモン分泌の急激な低下などが挙げられます。
■ 骨の健康と「身体活動」
骨の健康には、「食事によるカルシウムの摂取量」や「老化による骨の強度の低下」(骨の老化については天使のケア10月号参照)が関連していますが、「身体活動」も骨組織内のカルシウム沈着を促進します。骨の成長を促進するためには負荷(体重など)をかけるか,重力に逆らって動くかして、骨に圧力を加えることが大切です。筋肉に体重をかけて(例えば腕立て伏せ)、その発達が刺激されるように、骨に圧力をかけることで骨が強くなっていきます。
宇宙から帰還した飛行士の骨は弱くなっているそうですが、なぜでしょうか?ヒトの骨や筋肉は地球上の重力のもと、2本足で活動できるように発達してきました。ところが無重力下では骨に全く力がかからず骨が強くある必要性がないのです。そのため、骨から血液中にカルシウムが溶け出し、尿や便の中に排泄されてしまいます。
運動のなかで、ウエイトリフティングやランニング、エアロビクスは骨にかかる負荷が大きいので、骨の成長を促進する可能性があります。一方、水泳や水中エアロビクスは浮力が生じるので、前者に比べてそのはたらきは弱いと考えられます。現在のところ、運動によって骨量が増加する詳細なしくみは明らかになっていませんが、(1)電気的な刺激による骨芽細胞の増加、(2)血流の増加によるカルシウム沈着の促進、(3)筋力の増大に伴う骨への負荷の増大、などが考えられています。
■ 日常の食生活で丈夫な骨に―さて何をたべましょうか?
骨の健康のためには、重力や運動による刺激がとても重要であることがわかりました。さて、いくら刺激があっても骨をつくる材料がなくてはできあがりません。「カルシウム」、そしてカルシウムの腸管吸収を促進する「活性型ビタミンD」が必要です。ビタミンDは紫外線によって「活性型」にかわります。それなら、サプリメントを飲めばいいのかな・・と思いますか?いえいえ、そうではありません。青年期は食欲旺盛な時期ですから、おいしい食事だけで1日に必要なカルシウムを十分摂ることができます。
日本人の食事摂取基準(2005年版)では、カルシウムの1日摂取目標量は15-17歳の場合、女性650mg/男性850mgとなっています。これを1日の献立例で考えてみましょう。
| 食 品 | 量(g) | 目安 | エネルギー(kcal) | カルシウム(mg) | ||
| 朝食 | ごはん | ごはん | 220 | 茶碗軽く2杯 | 370 | 7 |
| みそ汁 | じゃがいも | 50 | 1/2個 | 38 | 2 | |
| カットわかめ | 2 | 3 | 16 | |||
| みそ | 10 | 19 | 10 | |||
| ねぎ納豆 | 納豆 | 50 | 1パック | 100 | 45 | |
| ねぎ | 5 | 1 | 2 | |||
| 小松菜の中華風炒め | こまつな | 100 | 14 | 170 | ||
| ごま油 | 6 | 小さじ1.5杯 | 55 | 0 | ||
| 牛乳 | 牛乳 | 200 | 1カップ | 134 | 220 | |
| 昼食 | ざるそば | 干しそば | 150 | 大盛り | 516 | 36 |
| めんつゆ | 30 | 13 | 2 | |||
| 和風チーズオムレツ | 豚ひき肉 | 30 | 66 | 2 | ||
| 卵 | 50 | 1個 | 76 | 26 | ||
| にんじん | 30 | 11 | 8 | |||
| えのきたけ | 50 | 11 | 0 | |||
| とろけるチーズ | 30 | 114 | 204 | |||
| しょうゆ | 5 | 4 | 1 | |||
| 油 | 4 | 小さじ1杯 | 37 | 0 | ||
| ボイルキャベツ | キャベツ | 50 | 12 | 22 | ||
| マヨネーズ | 12 | 大さじ1杯 | 84 | 1 | ||
| 間食 | ヨーグルト | プレーンヨーグルト | 200 | カップ1杯 | 124 | 240 |
| 砂糖 | 10 | 小さじ3杯 | 38 | 0 | ||
| 果物 | かき | 200 | 大1個 | 120 | 18 | |
| キウイフルーツ | 100 | 1個 | 53 | 33 | ||
| 夕食 | 枝豆ごはん | ごはん | 200 | 茶碗軽く2杯 | 370 | 7 |
| むき枝豆 | 40 | 54 | 30 | |||
| すまし汁 | もめん豆腐 | 50 | 1/8丁 | 36 | 60 | |
| 鮭のちゃんちゃん焼き | 鮭 | 30 | 67 | 7 | ||
| たまねぎ | 50 | 19 | 11 | |||
| かぼちゃ | 40 | 36 | 6 | |||
| サニーレタス | 50 | 8 | 33 | |||
| ごま油 | 8 | 小さじ2杯 | 74 | 0 | ||
| みそ | 10 | 19 | 10 | |||
| 砂糖 | 10 | 小さじ3 | 38 | 0 | ||
| おでん | 大根 | 100 | 18 | 23 | ||
| こんにゃく | 100 | 1/4枚 | 5 | 43 | ||
| にんじん | 30 | 11 | 8 |
| 栄養素 | 合計量 |
| エネルギー(kcal) | 2767 |
| たんぱく質(g) | 105.5 |
| 脂質(g) | 78.1 |
| 炭水化物(g) | 411.7 |
| カルシウム(mg) | 1302 |
| 鉄(mg) | 16.6 |
この献立例のように、特別な素材は使わなくても、十分にカルシウムを摂ることが出来ます。ここでは材料のイメージを持ってほしいので、調味料の一部は載せていません。味付けは皆さんにおまかせします。
食事摂取基準の「身体活動レベルII」(ふつうの活動量)を基準に考えると、男性でエネルギー2750kcal、女性では2200kcalが必要量と考えられます。この献立例は男性のエネルギーに合わせています。カルシウムは1300mgもとれます。表を見て、カルシウムの多い食品(黄色)に注目してください。上から納豆、小松菜、牛乳、チーズ、ヨーグルト、豆腐、こんにゃくとなっています。活動量の多い人は、これらのカルシウムの多い食品を増やして、自分の必要量にあった食事をしてくださいね。「これを食べると○○が治る!」といった食品はありません。栄養学科では体のしくみを知った上で、どんな食品をどのような組み合わせで食べたらよいか、知識を応用できる力を身につけていきます。
参考文献
- Whiting ,S.J.et al.;Factors that affect bone mineral accrual in the adolescent growth spurt. J. Nutr. 134(3):696S-700S,2004
- J.F.サリス、N.オーウェン/竹中晃二監訳:身体活動と行動医学―アクティブ・ライフスタイルをめざして、北大路書房、2000
- 厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2005年版)、第一出版、2005
- 髙橋久仁子:「食べもの神話」の落とし穴、講談社、2003
- 九州大学健康科学センター:健康と運動の科学、76-77、大修館書店、1998
- 池上彩子、清野佳紀:身体活動と生活習慣病、日本臨牀、58、484-488、2000
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