2005.7月 高血圧を防ぐDASH食
血圧の上と下って・・・?
心臓は規則正しく収縮し、血液を全身に行き渡らせるポンプの役割をしています。血圧は心臓の収縮期に最も高くなり、拡張期の終わりに最も低くなります。この、最も高くなった時点の血圧を収縮期血圧、最も低くなった時点の血圧を拡張期血圧といいます。(血圧についての詳しい説明は、天使のケア6月号を参照してください。)
■ 高血圧の定義
自分の血圧がどれくらいか知っていますか?また、どれくらいの値であれば高血圧なのでしょうか?日本人の成人の場合で収縮期血圧が140㎜Hg以上または拡張期血圧が90㎜Hg以上を高血圧といいます。(図1)
血圧を1回だけ測定して、その値が高血圧の範囲に入っていたとしても、それだけで高血圧であるとはいえません。高血圧の診断は、少なくとも2回以上の異なる機会に測定された血圧値に基づいて行われます。血圧は変動しやすく、激しい運動をしたとき、緊張しているとき、寒いときなどには高くなるからです。これは、血液の循環を調節する機構が体内には備わっているため、血圧は環境の変化に応じて変化するからです。普段、家庭で測定している血圧は正常でも、医療機関などで測定すると緊張してしまい血圧が高くなってしまうことがあります。こういった現象は白衣高血圧とよばれています。この白衣高血圧が、有害か無害かはまだ確定していません。
■ 血圧を正確に測定するために
朝は起床後1時間以内、排尿後、座位1~2分の安静後、降圧薬服用前、朝食前。晩は就床前、座位1~2分の安静後に測定することが日本高血圧学会で推奨されています。また、指や手首で測定できる血圧計も販売されていますが、正確に測定するためには、上腕で測定する血圧計を使用する方がよいでしょう。
■ 血圧が高いとどんな問題があるの?
血圧が高くなると、脳血管障害の罹患率、死亡率が高くなります。脳血管障害では、脳内の血管が破れたり詰まったりするため、脳の血流が阻害され、酸素の供給量が低下します。このために脳が傷害され、その部位によって、手足の麻痺や失語症など様々な後遺症が残ることが少なくありません。脳血管障害を発症した1年後、介助を必要とする人の割合は29~45%にもなります。このようなことから、脳血管障害は寝たきりの原因にもなっていますので、寝たきりにならないようにするためにも、高血圧対策はとても重要です。
また、高血圧は心血管病の危険因子のひとつでもあり、高血圧は日本人の三大死因であるがん、心疾患、脳血管疾患のうちの2つの疾患の原因となっていますので、血圧を正常値に維持することはとても大切です。
■ 血圧を下げるためには?
高血圧は生活習慣病のひとつであり、高血圧の予防や治療には生活習慣を改善することが重要です。高血圧に関連する生活習慣として、食事、ストレス、運動不足、喫煙が知られています。
医療機関などでは、栄養士は食生活を改善して高血圧を治療するためにさまざまなアドバイスをします。だれでも好きなものを好きなだけ食べたいですよね。好きなものを控えて嫌いなものも食べるようにするのは、なかなか難しいことです。また、忙しいことを理由に、食事を簡単に済ませてしまったりしてしまいがちです。食生活を改善してもらうためには、その人その人の好みや環境などにあわせてアドバイスをする必要があります。栄養士の腕の見せ所ですね。
■ 血圧を下げるための食事
どんな食事が血圧を下げる効果があるのでしょうか?それを調べるために、アメリカでDASH研究という調査が行われました。DASHは、Dietary Approaches to Stop Hypertensionの略です。「高血圧を防止するための食事からのアプローチ」といった意味になります。この調査から、DASH食が血圧を低下させるということがわかりました。DASH食というのは、野菜、果物、低脂肪の乳製品が多く、飽和脂肪酸や総脂肪、コレステロールの量が少ない食事です。
このDASH食は、野菜や果物、乳製品を中心として構成されていますが、これらの食品は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、たんぱく質を多く含んでいます。これらの栄養素は血圧を下げる効果のあることが知られています。また、肉や乳製品に含まれる飽和脂肪酸は血圧を上げる働きがあります。低脂肪の乳製品を摂ることで、この飽和脂肪酸の摂取量を抑え、カルシウムを沢山摂ることができます。これらの効果によって、DASH食が血圧を低下させたと考えられます。
この後に行われた研究で、DASH食にさらに食塩制限を加えると、より効果的であることが示されています。けれども、なかには食塩を制限しても血圧が下がらないという人もいますので、食塩だけではなく、食事全体を改善することが必要です。
■ いつもの食事をDASH食に
高血圧のような生活習慣病は、「特定の食べ物が効く」というようなことはありませんが、生活習慣全般を改善することで予防や治療をすることができます。健康で長生きするために、若い時期からよい生活習慣を身につけるようにしましょう。
その手始めとして、まずは朝食を見直してみませんか?朝食を食べていない人は、まずいつもより少し早めに起きて、少しだけでも食べるようにしましょう。トーストとコーヒーだけという人は、野菜や果物、低脂肪乳を加えてDASH食に近づけてみてください。
■ DASH風モーニング
参考文献
- 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編:高血圧治療ガイドライン2004. 日本高血圧学会, 2004
- 吉原史樹,河野雄平:高血圧の診療における非薬物療法の効果的な進め方,臨牀と研究,82: 43-46, 2005
- Appel, L. J. et al.; DASH Collaborative Research Group: A Clinical trial of the Effects of Dietary Patterns on Blood Pressure. N Engl J Med, 336: 1117-1124, 1997
- Sacks, F. M. et al.; DASH-Sodium Collaborative Research Group: Effects on Blood Pressure of Reduced Dietary Sodium and the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) Diet. N Engl J Med, 344: 3-10, 2001





